警察庁の発表によると、2018年に発生した交通事故の件数は43万601件となっており、前年から約8.8%少なくなっています。[注1]
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減少傾向にある交通事故ですが、油断しているといつ事故に遭うかわかりません。
もし、家族や自身が交通事故に遭ったとき、覚えておきたいことが「後遺障害等級認定」です。今回は、この後遺障害認定について紹介します。
目次
後遺障害等級認定とは後遺障害に対する賠償制度
後遺障害等級認定とは、不慮の交通事故で生じた後遺障害に対する賠償制度です。
この等級は自賠法施行令で定められており、1級〜14級まで分かれていて、等級により補償額が大きく変わります。
後遺障害等級1級が最も重い後遺障害で、賠償金も3,000万円と高額。後遺障害1級は四体麻痺、遷延性意識障害で寝たきり状態になった場合、両眼失明などの症状が残る場合です。
等級はどこの部位にどのような後遺障害があるかで決まる
等級を決める場合、まずどこの部位に後遺障害があるかを確認します。その後、その後遺障害がどのような症状なのかをみていきます。
例えば、腕が動かないのか、あるいは腕を切断したのかといったように、その障害を分析していきます。
その後、その障害でどれだけ労働能力が下がるかを検討。この3つすべてを加味して等級が決まっていきます。
後遺障害が認定されるまでの流れ
事故で怪我を負ってしまったときに、最初は病院で治療をはじめます。医師による治療を続けたうえで、今後治療を続けても、怪我の症状が残り続けると医師が診断すると「症状固定」という段階にはいります。
これが後遺障害といえます。
症状固定の診断が下った後は、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらい、事故に関する資料と合わせて自賠責保険会社に提出します。
その後、保険会社は、調査事務所に調査を依頼し、その結果を保険会社が受けて被害者に認定結果が送られます。
事前認定と被害者請求について
後遺障害等級認定には2つの方法があります。事前認定と被害者請求です。
どちらも基本的な流れは変わりません。
事前認定は加害者側の保険会社が認定をする
事前認定とは相手の保険会社に認定を任せる方法です。後遺障害が残ってしまった場合に、そのまま相手方の保険会社が後遺障害等級の認定を行なってくれるため、保険会社が書類や資料を用意します。そのため、被害者が書類を揃える手間がかかりません。
ただし、保険会社は認定のための等級に対してのアドバイスなど積極的に動かないこともあります。
相手方の保険会社は、最低限の補償で済ませたいところですから、不利な情報は出しません。
たとえ医師からの診断書に不備があったとしても、医師からの所見がメモ程度でも、そのまま添付されてしまい、補償が想像異常に低くなってしまうこともあります。
被害者請求をするには書類をしっかりと準備
事前認定に対して、被害者請求は被害者自身が行います。
被害者請求をする場合、症状固定の診断が下った後に、医師から具体的な後遺障害の内容を記入した後遺障害診断書を作成してもらいます。
レントゲンの画像や、MRIのデータ、自賠責保険支払請求書兼支払指図書、交通事故証明書、事故発生状況報告、診療報酬明細書及び診断書、後遺障害診断書など症状を証明する必要書類を集めて準備を整えておきます。
自賠責保険会社や損害保険料率算出機構に書類を送ります。そこで審査が行われ、後遺障害等級の認定を受けます。
手続きの違いで差が出る理由
事前認定と被害者請求という手続きの違いで出る差は、被害者請求の方が適正な後遺障害等級が得られる可能性が高くなるというものです。
加えて、被害者請求の方が自賠責保険の振り込みが早くなります。どちらも大変重要なことですね。
事前認定の場合、保険会社は示談交渉が成立するまで賠償金を振り込みません。
提出書類が同じでも差がでるのは医師の判断による
事前認定と被害者請求は提出書類が同じでも、その中身に差があります。
先述のように、事前認定の場合、医師による後遺障害診断書に漏れがあっても、相手方の保険会社がそのまま通してしまうこともあります。
一方、被害者請求であれば、被害者が医師に直接症状を説明するため、正確かつ画像などでは伝わらない痛みなども伝えられます。
当然、医師もその問診結果を診断書に書くため、後遺障害の症状をより詳しく保険会社に伝えられます。
後遺障害の申請は弁護士や専門家がおすすめ
交通事故にあって後遺障害の申請をする場合、弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- *慰謝料の増額が見込める可能性が高い
*適切な後遺障害認定を受けられる
*交渉を任せられる
慰謝料の増額が見込める
慰謝料は、加害者が加入している保険会社の基準から算出されるケースが一般的です。そのため、独自の算出法で慰謝料が算出され、想定よりも低い額が提示される可能性もあります。
このような場合、弁護士をたてておくことで、過去の判例などを引き合いに出し、適正な請求が行える可能性が高まります。
適切な後遺障害認定を受けられる
後遺障害認定は、提出する書類の内容によって変わってきます。そのため、提出書類に不備があった場合、本来の等級よりも低くなってしまうことも考えられます。
弁護士に依頼することで、このようなリスクも軽減できます。
特に交通事故案件を数多く手がける弁護士であれば、診断書の適切な書き方や証拠になる書類などを提案してくれます。
後遺障害認定を受ける際、加害者や保険会社と直接やり取りすることがあります。当然、自分でもこのやり取りは行なえます。ですが、弁護士であれば、交渉事に優れていますし、スムーズに進めてくれます。
事故による肉体的・精神的疲労がたまっている状態では、交渉もうまく進められません。そのため弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼する際は費用がかかることを覚えておく
弁護士に後遺障害認定を依頼する場合、弁護士費用がかかるということを覚えておきましょう。後遺障害認定にかかる弁護士費用相場は以下のとおりです。
弁護士費用が賠償金を上回らないことが肝心
交通事故で弁護士に依頼する場合、まずは、依頼することで増額する賠償額が弁護士費用よりも高くなることが大切です。弁護士に依頼る際は、法律相談事務所などで、弁護士費用の見積もりを依頼しておきましょう。
こうすることで、依頼しようとしている案件が、弁護士費用に見合うかどうかを事前に図れます。
ただし、後遺障害認定を弁護士に依頼する際は、賠償金が弁護士費用を上回る可能性が高い傾向にあります。
後遺障害認定を受けると、通院慰謝料はもちろん、後遺症障害慰謝料を請求できるため、賠償額が増えることが多くあります。
弁護士特約に入っていれば費用は抑えられる
保険サービスのなかには、弁護士費用特約というものがあります。これは、加入している任意保険から弁護士費用が払えるという保険サービスです。
保険会社によって異なるケースがありますが、最大300万円までの弁護士費用を負担してもらえます。
弁護士に相談する際はタイミングに注意
弁護士に相談する際は、タイミングに注意しましょう。まず、示談交渉が終わった後では、損害賠償の金額を変えることはできません。そのため、この段階で弁護士に相談しても対応できない可能性があります。
また、損害賠償請求には3年という時効があります。後遺障害認定に関しては、医師から症状固定の診断を受けた翌日からが時効が数えられます。そのため、交渉が難航して示談成立まで3年以上かかると賠償金を請求できません。弁護士に依頼するなら、必ず3年のうちに依頼しましょう。
後遺障害認定は悩まずに専門家に相談しよう
不慮の自己で怪我を負ってしまったときは、まずは医師の診断を受けましょう。もし、後遺障害が発覚した場合、自分だけでなんとかしようとするのではなく、弁護士をはじめとした専門家に相談するのが得策です。専門家であれば、知識も豊富なため、安心して任せられます。
ですが、専門家任せではなく、自分で得られる知識はしっかりと押さえておいて、間違いのない後遺障害申請を行えるようにしておきましょう。
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