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交通事故で起こる骨折
交通事故で起こる骨折には様々なものがあります。交通事故のエネルギーからすれば,およそ人の体のどの骨も骨折してしまう可能性があります。
実際に,私自身も,頭部骨折,脊椎骨折,腰椎骨折,腕の骨折,手の骨折,指の骨折,足の骨折,膝の骨折,足指の骨折,肋骨の骨折,骨盤骨の骨折,尾てい骨の骨折など,多くのケースの依頼を受けてきました。
また,骨折の種類としても,開放骨折,関節内骨折,圧迫骨折など折れ方も様々です。
このような場合,事故初期の段階で被害者が把握しておくべきことは,骨折の治療期間と残りうる後遺障害等級についてでしょう。
骨折の治療期間
一口に骨折の治療期間といっても様々ですが,骨折の治療というのは基本的には骨を癒合させてリハビリにより運動能力を回復するというものですから,骨折の治療期間=骨の癒合期間+リハビリ期間(経過診察期間)ということになります。
まず,癒合期間については,グルートの表とコールドウェルの表というのが有名ですが,グルートの表というのは癒合期間を部位によって分けて2週間〜12週間としており,かなり短めです。コールドウェルの表はもう少し長めになっていますが,何れにしても参考程度のものです。
実際のイメージとしては,良好なケースで癒合までだいたい1〜2ヶ月くらいはみて,リハビリとして+3〜4ヶ月程度という感じだと思います。
何れにしても,後遺障害等級との関係では6ヶ月程度,少なくとも5ヶ月程度は通院を続けることが必要です。
癒合がなかなかうまくいかないケースだと,1年以上,私が経験した中で長いものは3年以上かかったケースもあります。また,癒合がうまくいかない場合には,癒合が不完全な偽関節状態のまま症状固定となることもあります。症状固定というのは,治療終了とほぼ同義です。
骨折で認められうる後遺障害等級
骨折で認められうる後遺障害等級としては,大きく分けて,神経症状によるもの,可動域制限によるもの,変形によるものの3つがあります。これらの後遺障害が並存する可能性もあります。
(1)神経症状なら14〜12級
まず,神経症状によるものというのは,痛みや麻痺が残っているようなケースです。この場合,14級または12級の認定がされえます。
(2)可動域制限なら6級〜12級
次に,関節の可動域制限ですが,これについては,原則として健側(怪我をしていない側)との比較において,可動域が75%以下となっていれば12級,50%以下となっていれば10級,ほとんど動かない状態であれば8級となります。また,あまり多くありませんが,体幹骨(背骨)の可動域制限の場合には6級〜11級となります。
他に,手指の可動域制限でいうと,片手指の場合には7級〜14級の認定がされえます。
また,少し特殊なものとして,人工関節を入れた場合には,実際の可動域制限の有無に関わらず10級が認定されます。
(3)変形障害なら6級〜12級
次に,変形障害ですが,もっとも基本的な変形障害としては鎖骨骨折等の場合に外観上の変形が残っているというときには12級が認定されます。
他にも,体幹骨の圧迫骨折のような変形の場合には6級か11級が認定されます。8級相当という認定となることもあります。
やや特殊なものとして偽関節がありますが,これも変形障害の一種であり,8級認定となります。
骨折の場合の示談金額
骨折事案の場合,入通院慰謝料は,赤い本の別表Iというむち打ちなどよりも高い基準で算定されますし,休業の必要性も認められやすいため,休業損害などもしっかりと認定されるケースが多いです。
そのため,もし後遺障害等級がつかない場合であっても,示談金額が200万円以上になることもよくあります。
後遺障害等級がつくケースでは,等級によってさらに損害が追加されます。
後遺障害等級が認定された場合には,後遺障害慰謝料と逸失利益(将来の収入減)が損害として認められます。なお,痛みなどが残っているケースでは,多くの場合少なくとも神経症状14級の認定は得られることが多いです。変形癒合していて神経症状が残っているなら12級となるでしょう。
後遺障害等級がつくと,後遺障害慰謝料は等級に応じて統一的に認められます。例えば,14級なら110万円,12級なら290万円,10級なら550万円,8級なら830万円といった具合です。変形障害しか残っておらず逸失利益が全く認められない場合にはこれらの基準から20〜50%程度増額した慰謝料が認められることもありますが,普通は逸失利益を認定してもらう方が金額が高くなるため,逸失利益をしっかりと認めさせる方向で交渉していくことになります。
逸失利益は,その人の事故前の収入や年齢によるところがあるので一概に言えませんが,だいたい数十万円〜数千万円になります。幅がありすぎですが,14級なら数十万円〜200万円,12級だと1000万円前後,10級以上だと数千万円となることが多いかなと思います。あくまでも参考です。
なお,逸失利益の計算の基礎となる収入は原則として実収入ですが,概ね30歳以下の若年者の場合には,賃金センサスによることとなりますので,その点で逸失利益が高額になるケースもあります。
交通事故で骨折したら,早めに弁護士に相談しよう。
何にしても,交通事故で骨折した場合の示談金は100万円以上〜数千万円となり,一番損害が小さいケースであっても弁護士が入って示談金を増額する余地が十分にあります。
もし,交通事故で骨折してしまった場合には,早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
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