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交通事故の「民事裁判」について知っておきたいこと

示談・調停が決裂した場合は民事裁判で解決を図る
成田 翼 弁護士
弁護士法人 エース
代表弁護士成田 翼
所属弁護士会第一東京弁護士会

交通事故の民事裁判について

交通事故の民事裁判は示談交渉・調停が決裂したケースや、加害者が提示した損害賠償に被害者が満足できず訴訟した場合などに双方の主張を法廷で述べて解決を図る場です。

一方で検察官が被害者を起訴して科す刑罰・量刑などを問う場刑事裁判であり、民事裁判と刑事裁判はそれぞれ別軸で進行します。

例として飲酒運転による人身事故が発生した場合、加害者が違反した道交法の刑事罰は刑事裁判にて責任が問われます。
被害者に対する償いは示談交渉となりますが、保険会社から提示された示談金に被害者が納得できず訴訟した場合は民事裁判にて適正な賠償額を取り決めるのです。

さらに加害者は免許の効力停止や取り消しといった行政処分も同時に下されます。

交通事故の被害者は、手足の麻痺といった日々の生活に支障をきたす重篤な後遺症を患ってしまうことも少なくありません。
被害者が脊髄損傷や脳機能障害などを患ってしまった場合は本人とその家族を救済するため、加害者が加入する保険会社から多額の賠償が提示されるケースがほとんどです。

しかし交通事故における示談金は、その賠償額が必ずしも適正であるとは限りません。被害者は民事裁判にて賠償額が適正値を下回っていることを証明することで、当初提示された賠償額よりも増額できる場合があります。
そのため自身が交通事故の被害者となり提示された賠償に不服を覚えた際は、自身および家族の生活を支えるために訴訟を起こしたほうが良い場合があるのです。

民事裁判の手続き

実際に民事裁判を起こす際は被害者の所在地加害者の所在地交通事故が発生したエリア、いずれかを管轄する裁判所に訴状を提出する必要があります。

被告に対する請求額が140万円未満なら簡易裁判所、140万円以上の場合は地方裁判所が提起先です。
また、裁判に備えて用意しておくべき書類は、人身事故か物損事故であるかによって内容が異なります。

民事裁判で用意する書類

人身事故は物損事故と比べて裁判に備えて用意しておくべき書類が多く、被害者が亡くなってしまった人身事故で遺族が訴訟した場合は上述の書類にあわせ、死亡診断書除籍謄本戸籍謄本が必要です。

さらに交通事故が原因で発生したその他記載のない費用も損害賠償の細目として加えられる余地があるため、各種領収書は破棄せず証拠として保管しておきましょう。

裁判にかかった費用は敗訴した側が負担しなくてはいけない

交通事故の民事裁判において発生した費用は、原告・被告を問わず民事訴訟法によって敗訴した側が負担すると定められています。

民事裁判では訴訟を起こした原告が裁判所に支払う郵便料や申立手数料(収入印紙)を先に負担しますが、勝訴すれば弁護士費用を含む裁判にかかった費用一式を後から損害賠償に加算して被告に請求することが可能です。

民事裁判で収める郵便料は裁判所によって異なり、例として東京地方裁判所では原告および被告の当事者が各1名の場合6,000円です。ただし当事者が1名増えるごとに2,144円増額され、郵便料は現金予納もできます[注1]。 申立手数料は被告に対する訴額によって異なり、訴額が高額であるほど手数料の負担も大きくなります。訴額ごとの申立手数料は次のとおりです[注2]

民事裁判の申立手数料

被告に対して1,300万円の損害賠償を請求する場合、その手数料は59,000円です。また後遺症が残ったケースなどで1億円を請求した場合の手数料は30万円を超えます。
郵便料や申立手数料は民事裁判において必ず収めなくてはいけない費用ですが、資力がなく支払いが困難な場合は訴状の提出にあわせて訴訟救助を申し立てて受理されれば支払いを先送りにすることが可能です。

[注1]東京地方裁判所への民事訴訟事件又は行政訴訟事件の訴え提起における郵便切手の予納額について|裁判所
http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/syoutei_osirase/l4/Vcms4_00000320.html
[注2]民事訴訟費用等に関する法律別表第1|裁判所[pdf]
http:// http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20161001minsohiyouhoubeppyou1.pdf

弁護士に支払う着手金と報酬金は合計80万円が目安

従来の弁護士報酬は日本弁護士連合会によって報酬基準が設けられていましたが、同基準が廃止されて以降は弁護士がそれぞれ独自の料金を定められるようになりました。
そのため依頼する弁護士次第で費用に差がありますが、着手金と報酬金はあわせて80万円が目安とされています。

日本弁護士連合会が全国の会員を対象に行ったアンケートによると、交通事故において訴訟を起こし妥当な賠償請求を行ったケースにおける着手金は30万円(49%)、報酬金は50万円(35%)が最も多いという結果でした[注3] 。

そのため交通事故の民事裁判では、弁護士に支払う着手金と報酬金はあわせて80万円程度かかると考えましょう。
ただし弁護費用は着手金・報酬金以外にも交通費や日当が必要となり、着手金は請求しないかわりに賠償額の何割かを報酬金として請求するなど独自の料金プランを設けているケースもあります。

[注3]市民のための弁護士報酬ガイド|日本弁護士連合会[pdf]https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/guide.pdf

民事裁判の流れ

被害者が裁判所へ訴訟を提起して受理された後、裁判所が第1回口頭弁論の期日をおおむね1〜2ヶ月以内で指定します。
第1回口頭弁論において被告は答弁書をあらかじめ提出していれば出廷する必要がありませんが、原告は必ず出廷しなくてはいけません。
第2回目以降の口頭弁論では弁護士を含む当事者が法廷でそれぞれの主張を行い、証拠の提出・反論といったサイクルを月に1回程度の間隔で繰り返し審理されます。

交通事故の民事裁判にかかる日数は争点や被告の反論などによって変動し、短期なものでは半年以内に決着がつきますが、長期化すると1年以上を要するケースも少なくありません。
ただし第1回口頭弁論で被告が答弁書を提出せず出席もしなかった場合、原告の訴状内容を被告が異議なく認めたとみなされ、原告の要求どおりの判決が下される欠席判決に至ることがあります。

幾度かの口頭弁論で当事者それぞれの主張・証拠がすべて述べられた後は訴訟の争点を整理するフェーズとなり、この際に裁判所から和解案が示されます。和解案に当事者らが合意すれば和解が成立して早期な終局が望めますが、双方に和解の意向がなければ判決をもって終局するという流れが一般的です。

第1審の民事裁判における終局は約半数が判決によるものであり、和解による終局は3〜4割ほどです。

裁判所が公表している統計データによると、平成16年4月から同年12月末までの期間における全国の地方裁判所で既済となった民事裁判は10万6,553件であり、そのうち終局区分の割合は判決47.4%、和解35.5%、取下げおよびその他が17.1%という結果でした[注4]。

[注4]地方裁判所における民事訴訟事件の審理の状況|裁判所[pdf]
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/20505102.pdf

判決が言い渡された2週間以内であれば控訴・上告できる

控訴・上告は判決が言い渡された2周間以内まで

口頭弁論を終えて和解が成立せず裁判所から判決が言い渡されると裁判は一時的に終局しますが、判決が言い渡された2週間以内であれば控訴・上告が認められています。そのため第1審の判決に不服がある場合は控訴、控訴審の判決に憲法解釈の誤りがある場合などは上告することが可能ですが、判決が言い渡された2週間以内に上訴しなかった場合は判決が確定します。

第1審を不服として控訴状を提出した後は、50日以内に第1審の判決が正当ではない理由を記入する控訴理由書を作成して提出しなくてはいけません。

控訴理由書を受け取った裁判所が適当な控訴であると判断すれば開廷され、控訴審が行われます。ただし控訴審は第1審の判決が正当ではない理由を争点とするため、交通事故の一部始終を見ていた第三者の証言が得られたなどの新しい証拠がなければ口頭弁論は1回で終結してしまい判決は覆りません。

また控訴審が終局した後は最高裁判所へ上告することも可能ですが、上告は控訴審の判決に憲法解釈の誤りがある場合や控訴手続きに違反があったケースに限られます。

そのため控訴審の判決で言い渡された賠償額に満足できないといった不服を理由とする上告は認められておらず、法律に関する問題がない限り交通事故の民事裁判は第1審・控訴審の2回までと考えるのが妥当です。

注意するポイント

交通事故の民事裁判において注意するべきポイントは次のとおりです。

証人が法廷に出席する際の交通費や日当

交通事故の民事裁判で法廷に証人を招いた場合、当事者が証人の交通費や必要に応じて宿泊費を負担することが求められます。
さらに証人は仕事を休んで出席する場合もあるため、日当も負担する必要があります。証人の日当額は裁判所によって定めが異なり、東京地方裁判所の場合は8,000円以内です。

控訴審の申立手数料は第1審の1.5倍かかる

申立手数料(印紙代)は第1審に限らず控訴審においても収める必要があり、金額は第1審の1.5倍と定められています。
例として第1審の訴額が2,000万円の場合、12万円の申立手数料を納める必要があります。また交通事故の民事裁判においては稀ですが、仮に上告審が発生した際の申立手数料は第1審の2倍となります。

裁判では勝訴しないと大きく損する

裁判は交通事故の被害者が当初提示された示談や調停に納得できず訴訟されるものですが、勝訴しないと大きく損してしまうリスクが伴います。

裁判は示談交渉で提示された賠償金を得る権利を捨てて起こすものであるため、敗訴してしまうと当初の賠償金を受け取れません。
さらに裁判費用は敗訴した側が負担することが民事訴訟法によって定められているため、仮に被害者であっても敗訴した場合は一方的な金銭的負担を強いられてしまいます。

交通事故の民事裁判なら弁護士に依頼

裁判は弁護士を雇わなくても個人で手続きおよび法廷に立つことができます。
しかし訴訟を提起して加害者側が弁護士を雇った場合は自らが法律の専門知識を擁していないと不利な情勢になってしまうため、被害者側も弁護士を雇って勝訴を狙わなくてはいけません。

さらに弁護士は裁判を起こす費用と請求できる賠償金から訴訟するべきか否か判断できるため、示談を進めたほうが裁判を起こすより多くの賠償金が得られるといったアドバイスも受けられます。

弁護士を雇わず裁判に臨んで勝訴するためには、必要な書類や証拠などを1人で準備して法的な観点から自らの主張が正しいことを法廷で述べることが必要不可欠です。
弁護士に依頼すれば煩雑な裁判の手続きを任せることができ、過去の判例などをもとに正当な賠償金を主張して増額を狙えますよ。

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