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交通事故を解決に導くために必要な示談交渉の基礎知識
示談交渉とは,交通事故における互いの責任割合に基づいて賠償金額を決めるために行われる話し合いのことです。
話し合いの末に取り決めた内容を「示談」といい,その内容について記した「示談書」を作成することによって示談が成立します。保険会社との示談では,「免責証書」などの言葉が用いられることが多いです。
示談は,法的な効力を持っているため,示談成立後,実際に決められた金額が支払われたあとは,たとえそれ以上の損害が発覚した場合でも原則として追加請求できません。
そのため,示談交渉する際はお互いが納得できるよう,きちんと話し合いを重ねることが大切です。
示談交渉は任意保険会社が代行してくれるケースがほとんど
示談交渉は事故の当事者同士が行うものと説明しましたが,自賠責保険とは別に任意保険に加入していた場合,自分が支払う側であれば,示談交渉は任意保険会社が代行してくれます。
事故の当事者同士が直接示談交渉すると,感情的になってトラブルに発展する可能性もありますので,任意保険に加入している場合に支払い側で示談交渉する場合には,任意保険会社を通して交渉する方が無難といえるでしょう。
事故発生から示談成立まで!示談交渉の基本的な流れを紹介
交通事故の発生から示談交渉の開始,成立までにはいくつかのステップを踏む必要があります。
状況によっては不要なステップもありますが,ここでは示談交渉の基本的な流れを時系列順にまとめました。
事故発生時の対応
事故が発生したら,以下の手順で対応しましょう。
- 交通事故が発生したら,まずは相手の救護を最優先にしましょう。
- 必要に応じて応急手当をしたり,救急車を呼んだりして対応します。
- その後,規模の大小にかかわらず,事故発生の旨を警察に連絡します。
- もし相手がケガをしている場合は,通報する際に「人身事故」であることを伝えましょう。
- 救護と警察への通報が終わったら,相手の氏名や住所,連絡先,車両の登録番号などを確認します。
- これらの情報をメモしたら,自身が加入している任意保険会社に連絡し,交通事故が発生したことを伝えましょう。
- その際,相手に関する情報を教えると,任意保険会社の方で必要な手続きを開始してくれます。
警察による実況見分
人身事故の場合,当事者同士の立ち会いのもと,事故の状況を確認する実況見分が行われます。
一般的には警察が間に入り,それぞれのいい分を聞いて総合的に事故当時の状況を判断することになりますが,ここでの結果は後に行われる示談交渉において重要な証拠となります。
事故直後なので冷静に対処するのは難しいかもしれません。しかし,あとで「言った,言わない」の水掛け論にならないよう,実況見分では当時の状況をしっかり伝えるようにしましょう。
検査・治療を行う
交通事故によってケガをした場合,病院に行って必要な検査と治療を行います。
事故発生時は何ともなくても,数日経ってから影響が出てくる場合もありますので,絶対に退場部と確信できる場合以外は,病院には必ず行きましょう。
時間の経過とともに体に異変が表れた場合は,医師の診断書を持って警察に行き,「物件事故」を「人身事故」に切り替えてもらう必要があります。
事故発生からある程度時間が経過していると,物件事故から人身事故への切り替えを嫌がられる場合もありますので,ケガが発覚したらなるべく早めに切り替え手続きを行うことが大切です。
症状固定の判断
交通事故によってケガを負った場合,通院あるいは入院をして治療にあたりますが,ケガの状況によっては治療を続けても症状が改善しない場合があります。
これを「症状固定」といい,体に残った症状は後遺症とみなされます。
症状固定になった場合,以降の治療費や通院にかかる交通費などは相手方に請求できなくなります。そのため,相手方の保険会社によっては早い段階で症状固定を要請されることがありますが,最終的な判断は医師と相談して慎重に行いましょう。
なお,保険会社によっては治療を続けているにも関わらず,途中で治療費を打ち切ってしまう場合があります。
その場合でも完治または症状固定と診断されるまでは根気よく治療を続けましょう。その間の治療費は自己負担となりますが,健康保険を使うこともできますし,示談交渉にて請求することも可能です。
そこで治療費の支払いを拒まれた場合は,弁護士に今後の対応を相談しましょう。
後遺障害の等級認定を行う
症状固定と診断されると,以降の治療費や通院治療費を請求できなくなりますが,後遺症が後遺障害と認められた場合には損害賠償の請求ができます。
後遺症の損害賠償請求には,医師に「後遺障害診断書」を作成してもらったうえで,後遺障害の等級認定を受ける必要があります。
通常のケガの検査と後遺障害の等級認定に必要な検査は内容がまったく異なりますので,必要な検査をきちんと受けましょう。
なお,後遺障害の等級認定手続きの方法には,相手方の保険会社に代行してもらう「事前認定」と,後遺症を負った本人が行う「被害者請求」の2通りがあります。前者の場合,手続きのすべてを相手方の保険会社が代行してくれるので簡単ですが,等級認定に関する資料の内容を被害者側があらかじめチェックすることはできません。
提出する資料の内容によっては,本来よりも低い等級で認定されてしまうことも考えられますので,少し手間がかかっても被害者請求を行うことをお勧めします。
被害者請求では自身で資料を収集・提出する必要がありますが,弁護士に依頼すれば必要な資料の用意を代行したり申請自体を代理して行なってくれますし,交通事故に精通した弁護士であれば,適切な認定が行われるよう最大限に配慮してもらえます。
なお,後遺障害の等級認定について不服があった場合は異議申し立ても行えますが,認定の誤りを指摘したり,新たな資料を提出したりするのは素人には難しいところがあります。
最初から弁護士に依頼してスムーズに対処してもらった方が時間や手間も省けて効率的でしょう。
交通事故の過失割合の決定
双方に過失がある交通事故の場合,任意保険会社を通じて両者が話し合い,合意によって過失割合を決定することになります。過失割合は道路交通法で決められた優先関係や遵守事項,事故の状況などをトータルで考え,妥当な割合を導き出します。ほとんどの事故類型については,判例タイムスという書籍で裁判所が基本過失割合や修正要素などをまとめてくれており,これに則って過失割合が判断されることになります。
ただ,保険会社はどちらも保険金の負担を最小限に留めたいので,支払う側の過失割合をなるべく小さく抑えようとします。
相手方から提示された過失割合が妥当な物であるかどうか,弁護士に一度チェックしてもらったほうが安心でしょう。
示談交渉を行う
過失割合が決定すると,相手方の任意保険会社から示談金が提示されます。この時点ではまだ示談交渉の最中ですので,不満があれば異議を申し立てて,正に,交渉することができます。
先にも説明したとおり,相手方の保険会社はなるべく賠償金を低く抑えようと画策してきます。安易に自己判断せず,示談金の提示が行われた時点で弁護士に相談していないならば,一度は提示された示談金額の妥当性を弁護士にチェックしてもらうとよいでしょう。
示談の成立
無事に示談が成立すると,示談内容に従って賠償金が支払われます。
この時点で交通事故は解決したことになりますが,一度示談が成立してしまった場合,よほど特殊な事情がない限り示談交渉をやり直すことはできません。
示談交渉は基本的に任意保険会社に一任する場合が多いので,話し合いの内容によっては同じような事例でも支払われる賠償金が大きく異なることがあります。
交通事故を起こした当事者は,なるべく早く事故を解決したいという気持ちから,相手方の保険会社が提示する条件を安易に呑んでしまいがちです。
その結果,不当に低い賠償金で示談成立してしまう可能性もありますので,示談交渉は慎重に行う必要があります。
示談交渉のタイミングを誤らないように注意
ここまで示談交渉の基本的な流れを紹介してきましたが,保険会社や相手によっては流れを無視して事故直後や治療中に示談交渉を持ちかけてくる場合があります。
「スムーズに事故を解決するために」などといわれると,つい応じたくなりますが,事故直後や治療途中の段階では総治療費や後遺障害の等級認定はまだ確定していません。
その時点で示談してしまうと,残りの治療費や損害賠償を請求できなくなってしまいますので,示談交渉は総治療費や後遺障害の等級認定が確定した後に行うようにしましょう。
示談交渉で後悔しないためにも弁護士に相談を!
過失割合や賠償金額を決定する示談交渉は,表向きには当事者同士の話し合いと合意によって決まるものとされていますが,実際には素人が過失割合や賠償金の判断を行うのは困難です。
そのため,任意保険会社に一任し,提示された条件をそのまま受け入れてしまいがちですが,相手方の保険会社はできるだけ支払いを最小限に抑えられるよう,相場より低い賠償金額を提示してくる可能性があります。
不当な条件によって被害者側が泣き寝入りしないためにも,示談交渉する際は弁護士にあらかじめ相談し,適正な交渉が行われているかどうか確認してもらうことをおすすめします。
もし後遺症が残り,後遺障害の等級認定を受けなければならなくなった場合も,弁護士の力を借りれば手続きから認定までスムーズに進むので安心です。
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