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骨折の方傷病別解説

交通事故で、主に認定される後遺障害を紹介します。

交通事故で、
主に認定される後遺障害を紹介します。

骨折の方

骨折について

交通事故による骨折は、その衝撃エネルギーの大きさから後遺障害を残しやすい傷病だといえます。また、一概に骨折といっても、上肢(手・手指)の骨折、下肢(足・足指)の骨折、脊柱(背骨)の圧迫骨折、顔面骨折、骨盤骨折など多くの箇所の骨折がありますし、手足の骨折についても関節部近辺なのか骨幹部なのか等で残りうる後遺障害も異なってきます。
骨折の治療自体は比較的シンプルで、とにかく骨を固定して癒合するかどうか経過観察するというのが基本方針になります。
また、上肢や下肢の骨折では靭帯のような筋繊維の損傷を併発することも多く、動揺関節やTFCC損傷で後遺障害等級が認定されることもあります。

骨折の種類

頭部・顔面

頭蓋骨線状骨折
頭を強く打ち付けて,頭蓋骨が線状に骨折したものをいいます。
基本的には治療をせずとも問題はありませんが,頭蓋骨の損傷の程度によっては高次脳機能障害等の危険性もあります。
頭蓋骨陥没骨折
頭蓋骨が凹むように骨折したものをいいます。 陥没の程度によっては,脳へ圧迫を加えたりあるいは脳を傷つけたりすることがあり,高次脳機能障害等の危険性もあります。
眼窩底骨折
眼球の後ろにある眼窩底が外圧によって骨折したものをいいます。
骨折を整復して,視神経等を元の位置に戻さなければなりませんし,複視等の後遺障害が遺る可能性も考えられます。

頚椎(首)

頚椎圧迫骨折
首の椎体の中心から前方方向に骨折するものをいい,頭部痛や頚部の疼痛・放散痛,麻痺等の症状が起こります。ひどい場合には脊髄損傷も考えられるので,MRIやCTの画像は撮っておいた方がいいでしょう。
頚椎破裂骨折
頚椎の圧迫骨折と椎対抗法の骨皮質の骨折が合併して,骨片が後方に突き出てくる骨折です。頭部痛や頚部の疼痛,運動制限等の症状が現れます。CT撮影は必ず行っておくべきでしょう。麻痺が遺る場合には脊髄損傷を疑わなければなりません。
頚椎横突起骨折
横突起骨折とは,首の骨の両側に伸びる突起である横突起が骨折するもので,首の根本付近で起こることが多く,圧痛や動作時痛等の症状がよく見られます。

肩・鎖骨・肋骨

肩甲骨骨折
肩甲骨骨折は肩甲骨体部の骨折,筋腱の付着部分である肩峰と烏口突起の剥離骨折等がありますが,他の部位に比べ骨折する確率は低いです。後遺障害としては,肩の可動域制限等が考えられます。
鎖骨骨折
鎖骨骨折は,肩側に近い部分の鎖骨遠位端骨折と,鎖骨の真ん中あたりの鎖骨骨幹部骨折と,首に近い部分の鎖骨近位端骨折の3種類があります。遠位端骨折は手術をしなければならないことが多いですが,骨幹部骨折や近位端骨折は,保存治療が一般的です。
また,遠位端骨折は肩の可動域制限が後遺障害として遺る場合が多く,骨幹部骨折の場合は変形障害が遺る場合が多いです。
肋骨骨折
肋骨骨折は,非常に高頻度で発症します。1,2本の骨折であれば保存療法対処することが多いですが,臓器の損傷を伴う場合には,骨折そのものの治療よりも,臓器の損傷の治療を行うことを検討していきます。骨折の程度によっては変形障害を残してしまうことがあります。

腕・肘

上腕の骨折

上腕の骨折には,肩に近い方の上腕骨近位端骨折,骨の真ん中の上腕骨骨幹部骨折,肘に近い方の上腕骨遠位端骨折の3種類があります。

   

①上腕骨近位端骨折
肩を強打したり,手をついた際に起こる骨折です。骨折部分のずれがあまり大きくない場合には保存療法を行いますが,大きくずれてしまった場合には手術を行います。 後遺障害としては,肩関節の可動域制限が考えられます。

   

②上腕骨骨幹部骨折
上腕の真ん中に起こる骨折です。上腕には橈骨神経という神経がとおっているので,上腕骨骨幹部骨折の際に橈骨神経を損傷してしまうと,橈骨神経麻痺という肘・手首・指の伸縮運動や感覚等に以上を来す障害が残存する可能性もあります。さらに,骨幹部での骨折は,骨折の態様によっては,骨癒合がうまくいかずに偽関節を作ってしまう可能性もあります。

   

③上腕骨遠位端骨折
上腕骨の遠位端骨折は,肘関節に近い部分の骨折です。肘関節の関節面に影響をあたえる上腕骨外果骨折,関節面には影響を与えない上腕骨顆上骨折,上腕骨内側上顆骨折とがあります。 関節面に影響を与える骨折の場合には,可動域制限等が残る可能性があります。上腕骨顆上骨折の場合には,その近辺を走る正中神経や尺骨神経を損傷してしまうと,それに伴う手関節や手指の麻痺が生じることがあります。また,骨癒合がうまくいかない場合には,変形や偽関節も考えられます。

肘の骨折
肘頭骨折は,肘を打ち付けること等で起こる骨折で,肘の可動域制限のほか,その部位を走る神経を損傷してしまった場合には,神経麻痺等の症状が残存する可能性があります。
橈骨骨折
橈骨(前腕の親指側の骨)の骨折には,肘側の骨折である橈骨頭骨折,橈骨の真ん中部分の骨折である橈骨骨幹部骨折,橈骨の手首側の骨折である橈骨遠位端骨折の3種類があります。遠位端骨折や骨幹部骨折の場合には,正中神経麻痺や橈骨神経麻痺が生じることがあります。
尺骨骨折
尺骨(前腕の小指側の骨)の骨折は,尺骨の肘側の骨折である尺骨頭骨折,尺骨の真ん中部分の骨折である尺骨骨幹部骨折,尺骨の手首側の骨折である尺骨遠位端骨折の3種類があります。尺骨についても,骨折部位によっては正中神経麻痺や,尺骨神経麻痺の症状が遺る可能性があります。また,可動域制限も考えられます。

手指

手指には多くの小さな骨があり,疼痛や可動域制限等の後遺障害が考えられます。基本的にはレントゲンで明らかになりますが,細かな骨を撮影するためにMRIやCT撮影も有用です。とりわけTFCC損傷の場合には,レントゲンだけでは診断することができないので,手をひねると痛い等の症状がある場合には,TFCC損傷を疑いMRIや関節鏡検査などを行う必要があります。

脚・膝

大腿骨骨折
大腿骨の骨折には,股関節に近い大腿骨近位部骨折(大腿骨頭骨折・大腿骨頚部骨折・大腿骨頚基部骨折)大腿骨転子部骨折,大腿骨の真ん中部分の骨折である大腿骨骨幹部骨折,大腿骨の膝側の骨折である大腿骨遠位部骨折等の種類があります。基本的には痛みにともなう神経症状の後遺障害の残存を考えますが,その他近位部骨折の場合には痛みの他に人工股関節や人工骨頭をいれなければならない可能性があります。また骨幹部骨折の際は短縮障害や偽関節の後遺障害を,遠位端骨折の場合には可動域制限をそれぞれ後遺障害として考えていく必要があります。
脛骨近位端骨折(プラトー骨折)近位端
膝関節の外側にある骨の骨折で,脛骨近位端骨折は,関節内骨折で可動域制限等の後遺障害が考えられます。靱帯損傷等をともなう可能性もあり,動揺性関節等の可能性も疑って,症状に応じてストレスレントゲンの撮影等も検討するべきでしょう。また,大腿骨と脛骨の間にはる半月板を損傷している可能性もあり,その際には,レントゲンだけでは明らかにならないので,MRI等を撮影しておく必要があります。
膝蓋骨骨折
いわゆる膝の皿の骨折です。基本的には痛みの後遺障害が考えられます。
脛骨・腓骨骨幹部骨折
脛骨と腓骨の骨の真ん中部分を骨折したものです。疼痛等の他,偽関節や短縮障害,変形障害が残存することが考えられます。

足指

足指には,距骨,脛骨,中足骨,踵骨等多くの小さな骨があり,レントゲンだけでは判然としないものもあるのでCT撮影をすることが好ましいです。それぞれについて骨折部の痛みや可動域制限が残存することが考えられます。


後遺障害等級獲得のポイント

ポイント1

神経症状なら

神経症状とは,痛みや麻痺が残存している状態です。この場合は,14級か12級の認定が考えられます。

ポイント2

可動域制限なら

関節の可動域制限ですが,これについては,原則として健側(怪我をしていない側)との比較において,可動域が75%以下となっていれば12級,50%以下となっていれば10級,ほとんど動かない状態であれば8級となります。また,あまり多くありませんが,体幹骨(背骨)の可動域制限の場合には6級〜11級となります。 他に,手指の可動域制限でいうと,片手指の場合には7級〜14級の認定がされえます。
また,少し特殊なものとして,人工関節を入れた場合には,実際の可動域制限の有無に関わらず10級が認定されます。

ポイント3

変形障害なら

変形障害ですが,もっとも基本的な変形障害としては鎖骨骨折等の場合に外観上の変形が残っているというときには12級が認定されます。
他にも,体幹骨の圧迫骨折のような変形の場合には6級か11級が認定されます。8級相当という認定となることもあります。
やや特殊なものとして偽関節がありますが,これも変形障害の一種であり,8級認定となります。

ポイント4

短縮障害なら

下肢が健側とくらべて1㎝以上短縮した場合には,その程度に応じて1㎝以上なら13級,3㎝以上なら10級,5㎝以上なら8級という後遺障害が考えられす。


示談交渉のポイント

骨折事案の場合,入通院慰謝料は,赤い本の別表Iというむち打ちなどよりも高い基準で算定されますし,休業の必要性も認められやすいため,休業損害などもしっかりと認定されるケースが多いです。
しかしながら,変形障害や短縮障害等が残存した場合には,逸失利益はないと主張されることが少なくありません。そうした場合にも保険会社にひるむことなく,裁判例から適切な相場感を設定し,その範囲に至るまで粘り強く交渉することが重要です。